MCAの「Mobile News Letter」

 

「MCA」へメールを送信

 
 Web Focus
 Carrier
 3G
 IT & Mobile
 Maker...etc
 Wireless LAN

 
 
 
 
 
 
 
検証!!PHS産業@ (040421)  

(アナリスト 天野浩徳)


1.はじめに
2.創生期:『関係者が胸を張った次世代通信技術の実像』
 
1)2010年に携帯電話を上回る予測
 2)戦々恐々とする携帯電話キャリア
 3)サービス開始前から価格競争
1.はじめに
  

  図:PHS加入者推移

 1995年のサービス開始後、今年で9年目となるPHSサービス。携帯電話を脅かす存在として期待を集めたが、これまでのところそういった勢力にはなり得ていない。むしろ、携帯電話の攻勢にさらされ、自らの存在場所(価値)を模索する歴史だっと言えるかも知れない。
 
 音声タイプの端末開発の停止、相次ぐサービス撤退、データ通信サービスへのシフトなど、かつて日本発の次世代通信技術として関係者が胸を張った当時のPHSサービスの姿はそこにない。もともとPHSの目指したものは何だったのか、そして何故変わらざる終えなかったのか?

 今回から数回に渡り、PHSの成り立ちと変遷について、競争環境という観点から独自に検証していきたい。

2.創生期:『関係者が胸を張った次世代通信技術の実像』

1)2010年に携帯電話を上回る予測

 1995年7月、日本に新たな移動体通信サービス「PHS」の商用化がスタートした。日本が生み出した通信規格としては初めて海外普及が見込め、米国や欧州に主導権を握られがちな通信分野で日本が技術力を発揮できる次世代通信技術の本命と目されていた。
 
 基本的な原理は携帯電話と同じ。無線基地局の出力が半径200−500mと、携帯電話(半径数キロ)に比べ極端に小さいため、高速で移動中には電波を拾えない弱点はあるが、基地局が小型・安価で済むため利用料金を安く設定できる強みがある。PHSは、TDMA−TDD(Time Division Duplex)デジタル伝送方式を採用し、32Kbpsの伝送チャネルを4つ持っていた。

 想定されたPHSのサービスコンセプトは、家庭や事業所などで利用しているコードレス端末が、屋外に持ち出した際には簡易な携帯電話になるというものであった。PHSでは、無線伝送部分にデジタル方式を採用している。そのため、高度な秘話通話機能など、アナログコードレスやアナログ携帯電話と比較し有利である。

 簡易な携帯電話としての利用を想定しているため、携帯電話のような独立網を構成するのではなく、ISDN網などの既存網を利用することによって投資コストを抑制、携帯電話より安価なサービスを目指した。

 PHS事業者は、NTT系のNTTパーソナル通信網グループ9社とDDI系のDDIポケット電話グループ9社、電力・JR系のアステルグループ10社。このうち、まずNTTパーソナルとDDIポケットが7月から首都圏と北海道でサービスを始める。利用料金は両グループほぼ同じで、新規加入料(契約事務手数料を含む)は7,200円、月額基本料は2,700円、通話料は市内3分40円。

 当時の郵政省が試算した予測によると、2010年時点の普及予測は携帯電話の3,200加入を上回る3,800万加入に達する。この点からだけでもPHSサービスに対する国の期待の大きさが伺える。

 国内だけでなく、海外にも展開できる巨大市場を目指し、通信機器やAVメーカーがこぞって参入、約20社のベンダーグループが形成される。当時、携帯電話と同じようにNECや松下通信工業などの通信専業メーカーの優位は揺るがないとの見方がある一方で、家庭用電話機市場で通信専業メーカーの牙城を切り崩したシャープや三洋電機などの例もあった。4月の携帯電話端末販売自由化で端末価格が大幅下落した時期とも重なったこともあり、早くも各社は熾烈な生き残り競争になることを感じていた。当時のPHSに対する注目度の高さを示す例として、一時グローバルプレーヤのノキアが参入を検討したことからも察することができるだろう。


2)戦々恐々とする携帯電話キャリア

 1994年度(94年4月〜95年3月)1年間の新規加入者数(220万加入)が1979年〜1993年までの累積加入者数(213万台加入)を上回るほど急拡大していた携帯電話サービスだが、新たな競合サービスの登場を控え、『価格引下げ』という対抗策を打ち出した。

 PHS開業前までには端末価格が1年間で半額程度に下がり、一部端末の実売価格は希望小売価格の半額以下に引き下げられた。新規加入料も3分の1以下の1万円前後になるなど、加入時の負担が大幅に軽減された。この結果、イニシャルコストは、PHSと十分に対抗できるレベルとなった。

 PHSが圧倒的に有利と言われてきた通話料に関しても、月額基本料を標準型(8,000円前後)に比べ6割程度安くする代わりに、通話料を1.5倍にした「ローコールプラン」を開発し、割安感を演出した。例えばIDOが6月1日から始めた「イーザ」は、ローコールをさらに発展させた「スーパーローコール」サービスで、月額基本料は2,700円とPHSと同額に設定した。

 携帯業界では携帯電話加入者の2割程度はPHSに流れるのではないかという危惧があった。値崩れを最も嫌っていたドコモが、最も安価な端末が25,000円(新規加入料込み)だった時期に、1.5GHzの端末で15,000円の店頭価格で販売しはじめたことからも、その危機感が見て取れる。



3)サービス開始前から価格競争

 携帯電話を凌ぐサービスとして注目を集めたPHSサービスにマスコミや利用者の期待も大きかった。その雰囲気に呼応するかのようにPHSは本来のコンセプトとはかけ離れた携帯電話との正面衝突の道を選択する。

 7月1日の発売にも関わらず、端末の先行発売がはじまったのだ。大手量販店の丸井は6月23日からDDIポケット電話の9機種に限定し、端末の販売価格を36,800円から44,800円と標準価格の約20%前後引き下げた。また、大手量販店のヨドバシカメラもPHS端末全機種を20%引きで販売した。

 おそらくこの背景には、PHS関係者の間に、携帯電話が各事業者が入り乱れた結果、価格が急落し普及したという経験則があったのだろう。更には、先行する携帯電話サービスに追いつくには、対抗上価格を引き下げなければならないという焦りもあったのではないかと推測される。このことは各事業者がサービス開始後、一斉に設備計画を前倒ししたり、増資に動いたことからも伺える。

検証!PHS産業(1)
検証!PHS産業(2)
検証!PHS産業(3)
検証!PHS産業(4)
検証!PHS産業(5)
検証!PHS産業(6)

 

1.はじめに

2.創生期:『関係者が胸を張った次世代通信技術の実像』
  1)2010年に携帯電話を上回る予測
  2)戦々恐々とする携帯電話キャリア
  3)サービス開始前から価格競争

 
4)トラブルとエリア不感多発で評価下げる
 5)価格引下げでPHS産業全体が「利益なき繁忙」状態へ突入


 3.成長期:『バブル到来』
 1)劇薬に支えられて急成長
 2)データ通信の進化
 3)法人市場開拓の準備
 4)期待された携帯電話との暫定接続だったが・・
 5)好調の陰で早くもささやかれはじめた再編論議
 6)需要拡大で新たな周波数追加の検討
 7)若年層が支えるリスキーな需要構造

4.成熟期:『バブル崩壊』
 1)突然の失速
 2)若年層と不良顧客の存在がPHS事業者の経営揺るがす
 3)異なる打ち手とその差
  4)生き残り競争繰り広げる端末ベンダー
 5)基地局市場から撤退するベンダーも登場
 

                                株式会社エムシーエイ(MCA Co.,Ltd)